過失割合はどうやって決めるのでしょうか

過失割合の基本的な考え方

事故後,保険会社から,「今回の事故で,あなたの過失割合は○ですので,賠償額から○%相殺させていただきます。」という話を突然されて驚いている方がいらっしゃると思います。
過失割合が納得いかないのでなんとかならないか,また,過失割合を保険会社に勝手に決められてしまい納得いかない,として弁護士にご相談いただく方も非常に多くいらっしゃいます。

過失相殺とは,当事者の間の公平のために,加害者だけではなく,被害者側の過失もある程度考慮して,損害賠償額を決める法律上の制度のことをいいます。
そのため,交通事故での加害者・被害者両方の過失割合を決めて,その割合に応じて損害賠償額を決めることになります。

注意が必要なのは,すでに支払われた治療費や休業損害などを含めたすべての損害賠償額から過失割合に応じて額が引かれることになることです。
例えば,保険会社から病院に直接支払った治療費が100万円,慰謝料が200万円での場合,すでに支払った治療費も合わせた全体の賠償金300万円から,過失割合が差し引かれることになるため,慰謝料が200万円であっても,過失割合が10%であれば30万円を差し引いた170万円が支払われることとなります。
そのため,全体の損害賠償額が大きければ大きいほど過失相殺で差し引かれる金額は大きいこととなり,最終的に支払われる賠償金が減ってしまいます。 

過失割合の決め方

過失割合は,東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版]』に記載されている事故類型に従って決まります。
そのため,保険会社が勝手に決めているというよりは,今回の交通事故の事故状況に当てはまる事故類型に記載されている過失割合が,今回の過失割合になるということです。保険会社の担当者の方は,交通事故に関して豊富な知識・経験を持っているので,通常は,事故状況に当てはまる事故類型から過失割合を決めますので,大きく間違えることはほとんどありません。

 しかし,事故状況に当てはまる事故類型から過失割合を決めるといっても,上記の東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版]』には,多くの事故類型が記載されていますが,すべてを網羅しているわけではありませんし,加害者が携帯電話を使用していた際の事故だった場合や制限速度をオーバーしていた場合,逆に被害者の方が横断禁止の道路を横断していた際に事故に遭った場合などのように,当事者の片方により落ち度(過失)があった場合については,事故類型に応じた過失割合だけでは,当事者の落ち度(過失)は反映できません。

 このような個別具体的な当事者の落ち度(過失)については,「修正要素」といって事故類型に応じた基本的な過失割合から当事者の落ち度(過失)に応じて修正することとされています。東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版]』にも,基本過失割合と一緒に修正要素として様々な修正項目が記載されています。

過失割合についての争い

 過失割合自体は,任意交渉においては,当事者間の話し合いで決まるものですので,保険会社の担当者の方に「あなたの過失割合は○%です。」といわれたとしても,被害者の方が過失割合に納得できなければ,その過失割合は決まったものではありません。
簡単にいえば,被害者側から,こういう理由だから過失割合はこのように考えるべきだ,と担当者を説得すればいいのです(弁護士としては,交渉するといいます)。それでも当事者双方が納得(合意)できない場合は,裁判を行い,最終的に裁判官が判断することになりますが,任意交渉段階でもきちんとした理由をもって交渉すれば,過失割合が小さくなる場合もあります。

では,過失割合を交渉する場合はどのようにしたらいいでしょう。

納得いかないから変更してくれ,ではさすがに保険会社の担当者の方も説得されませんので,なんらかの理由,言い換えれば「証拠」が必要となります。

事故当時の状況が明確に映像として録画されているドライブレコーダーが車に搭載されていれば,その動画が,保険会社の担当者の判断した過失割合とは事故類型が違っていれば,過失割合自体が動きますし,また,動画において加害者側の速度オーバーが写っていれば,過失割合の修正要素になります。
しかし,普及しているといってもドライブレコーダーを搭載している自動車はなかなか少ないと思います。

一般的に,私たち弁護士が,過失割合を争ううえで一番証拠として用いる機会が多いのは,事故時に作成した実況見分調書です。
過失割合が争いになるのは,車両損害や事故による怪我の治療が終わった損害賠償請求時であり,事故から時間が経っている場合が多いため,加害者・被害者共に事故の記憶が薄れていることが多いことから,事故状況に関する主張が対立してしまいます。
しかし,実況見分調書は,事故直後に警察立会いの下で現場検証を行って作成されるものですから,事故当時の記憶が鮮明であり,第三者である警察官の立会いがありますので,信用性が高いと一般的に考えられています。そのため,過失割合を争う場合,実況見分調書を取り寄せて,内容を精査し,過失割合の修正要素を主張できる場合があります。

このように,過失割合に納得いかない場合は,資料を精査して,過失割合を変更できる可能性がありますので,過失割合に納得できない場合については,一度専門家にご相談することをおすすめします。

 

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