不動産問題（相続関連）

相続と不動産

ある人（被相続人）が亡くなった場合，一定の親族関係にある人（相続人）が相続をします。被相続人が遺した相続財産の中に不動産が含まれる場合，その不動産を誰がどのように相続するかでもめるケースは非常に多くなっています。

相続財産である不動産をどのように分けるのかという不動産の相続の仕方（不動産の相続方法）と，一方が不動産を取得し，他方に金銭を支払う場合の支払額を決める基準として，どのように不動産の価値を評価するか（不動産の価格）が問題となります。

その他，不動産に住宅ローンが残存する場合，借地権，借家権が問題となる場合等，さまざまな問題があります。

不動産の相続方法

相続にあたり，被相続人の遺言書がある場合であって，遺言書に従って相続財産を分割すれば足りる場合には，不動産の相続も通常は，大きな問題は生じません。

しかし，遺言書がない場合，不動産をどのように分割するかは，協議等によって決定することになります。協議等によって不動産の分割を決める方法としては，現物分割，換価分割，代償分割があります。

現物分割

現物分割とは，相続財産自体を実際に分割して相続することをいいます。たとえば，ある土地を所有していた夫が妻と子を遺して亡くなった場合，その土地を妻と子で半分ずつ分割して所有することをいいます。

換価分割

換価分割とは，相続財産である不動産を売却して金銭にした後，これを相続人間で分けることを言います。たとえばある土地を所有していた夫が妻と子を遺して亡くなった場合では，その土地を売却して得たお金を妻と子で半分ずつ分けることになります。

代償分割

代償分割とは，不動産を特定の相続人に対して相続することとし，当該相続人が他方の相続人に対して金銭を支払って分割する方法をいいます。ある土地を所有していた夫が妻と子を遺して亡くなった場合では，妻一人が土地を単独で所有し，妻から子へお金を支払って分割することになります。

方法の選択

上記のうち，いずれの方法が優れているかについては，各相続人の資産状況，利害関係，相続税額等を参考に，選択することとなります。

不動産の価格

不動産を相続によって分割する場合，特に代償分割の方法によって分割する場合には不動産の価格が重要となります。不動産の価格には，実勢価格のほか，路線価，固定資産税評価額，地価公示（地価調査）価格があります（一物四価と呼ばれることがあります。）。

実勢価格

実勢価格とは、実際の取引が成立する価格のことであり，売り手と買い手の間で需要と供給が釣り合う価格をいいます。取引が行われた場合には、その取引金額が実勢価格になり、取引がない場合には、周辺の取引事例や以下の路線価，固定資産税評価額，地価公示価格から推定することになります。なお，不動産広告に掲載されている販売価格は，実際に取引が成立するまでの売主の希望価格であり，必ずしも実勢価格とは一致しません。

路線価

路線価は，相続路線価とも呼ばれるものであって，相続税算定にあたって参考とされる価格をいいます。路線価は，実勢価格よりも通常は低くなっています。

固定資産税評価額

固定資産評価額とは，固定資産税の課税のために算定基礎とされる価格です。この固定資産税評価額も，実勢価格よりも低い価格となっています。なお，固定資産税評価額は，３年に１度，不動産の価格を算定する専門家である不動産鑑定士が評価を行って（評価替え），算定されます。

地価公示（地価調査）価格

地価公示（地価調査）価格は，毎年1月1日（7月1日）の全国の土地価格につき，ポイントとなる地点について不動産鑑定士が算定した価格です。不動産は，一般に流通性が低いものですから，不動産取引に際し，その指標として参考とされるべきものとして算定される価格です。

相続における不動産の価格

特に代償分割の方法によって分割する場合，不動産を相続する者から不動産を相続しない者に対して，不動産の価格に対する法定相続分の支払いをする必要が出てきます。上記のとおり，不動産の価格には複数の種類があり，そのいずれの価格によるかで支払金額が大きく異なります。実勢価格での支払いのため，実勢価格を正しく算定しようとすると，不動産鑑定士による鑑定評価が必要となりますが，鑑定評価を行うには多額の費用が必要となります。なお，不動産の評価について，専門家によっても判断が分かれるケースもあります。そのような場合には，不動産の価格をめぐって訴訟になることもあります。